&kiitos

2022/03/29 22:09


ベルガモットの森に住む、妖精クールは

魔法使いのセラピスト。

木漏れ日の降り注ぐ穏やかな森を

クールはゆっくり歩きます。

 

どこかで誰かの声が聞こえます。

「ハクション!ハクション!」

ウサギのラパンは、くしゃみが止まりません。

クールはラパンを優しく撫で、

虹色のリュックからシャボン玉を取り出し、

そしてフーッと吹きました。

ふわふわ泡が舞い上がり、

やがて、パチパチ弾けます。

あたりにユーカリの香りがふんわり広がると、

ラパンの鼻はひんやりスッキリしました。

「お礼にタップダンスを踊ります。」

クールは嬉しくなりました。

 

クールは森を歩きます。

またどこかで誰かの声が聞こえます。

大きなクヌギの木の下で、カンガルーの親子が泣いていました。

「赤ちゃんを抱っこできないの」

クールはママの背中を優しく撫で、

そしてシャボン玉をフーッと吹きました。

ふわふわ泡が舞い上がり、

やがて、パチパチ弾けます。

あたりにローズマリーの香りがふんわり広がると、

ママは背中をうーんと伸ばして深呼吸。

ママのお腹のエプロンに戻った赤ちゃんは

おっぱいをゴクゴク飲みました。

ママはお礼にユーカリの葉をたくさんくれました。

クールは嬉しくなりました。

 

 

クールは森を歩きます。

またまた誰かの声が聞こえます。

熊のウルスの呼び声でした。

「眠れないんだ。助けてよ。」

すっかり元気をなくしたウルスを、クールは優しくハグします。

そしてシャボン玉をフーッと吹きました。

ふわふわ泡が舞い上がり、

やがて、パチパチ弾けます。

あたりにラベンダーの香りがふんわり広がると、

ウルスはなんだか眠くなり

洞窟のベッドでスヤスヤと眠りました。

クールはお家が恋しくなりました。

 

ベルガモットの森をオレンジ色の夕陽が包みこむ頃、

クールはチュールレースの羽を広げ、大空に飛び立ちました。

 

 風待 栞