&kiitos

2022/11/23 22:00

古時計が明日を告げる。

僕は今日も、ここで君を待っている。

 

大人になった君は、

僕のこと、忘れてしまったのかもしれない。

でも僕はちっとも寂しくなんかないよ。

 

だって、君と僕の思い出は、

今日も空に瞬くこの星の数より、

もっともーっと、

たくさんあるんだ。

 

 

桜の公園に舞い上がるブランコ。

あぜ道を急ぐ、朝寝坊の自転車。

山に沈む、茜色の夕陽。

さよならの体育館で、君が奏でたグランドピアノ。

 

海沿いのドライブではしゃいだ、オレンジレンジ。

テールランプのキャンドルと、夜空を彩る遠花火。

ハンドルに落ちた、大粒の涙。

 

やがて、結ばれた赤い糸。

異国に旅立つ君を、いつも通り、僕はここで見送った。

 

 

僕は、君と一緒ならいつも幸せだった。

 

 

思い出のひとかけら、ひとかけらが色褪せず、

この胸でキラキラ光るんだ。

 

だからね、僕はちっとも寂しくないよ。

 

でも、いつか、

もしもいつか、僕を思い出したら、

 

またあの頃みたいにギュッと抱きしめてほしいんだ。

 

僕もポカポカの心で、君をハグするからさ。

 

 

風待 栞